2015-07-20唱歌「ローレライ」2/2 [童謡・唱歌]
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唱歌「ローレライ」の元になったハイネの訳詩を引いておこうと思います。それによって分かることもあると思うからです。
「ローレライ(Die Lorelei)」作:ハイネ(H.Heine) 訳:片山敏彦
わが心かく愁わしき
その故をみずから知らず。
いと古き世の物語、
わが思うこと繁し。
夕さりて風はすずしく
静かなりライン河。
沈む日の夕映えに
山の端は照りはえつ。
巌(いわお)の上(え)にすわれるは
うるわしき乙女かな。
こんじきに宝石(いし)はきらめき。
こんじきの髪梳く乙女。
金の櫛、髪を梳きつつ
歌うたうその乙女、
聞こゆるは、くすしき強き
力もつその歌のふし。
小舟やる人びとは
歌聞きて悲しさ迫り、
思わずも仰ぎ眺めつ。
乗り上ぐる岩も気づかず。
舟びとよ、心ゆるすな、
河波に呑まれ果てなん。
されどああ歌の強さよ、
甲斐あらず舟は沈みぬ。 (新潮文庫1981)
片山訳は4行づつの全6節をもちます。これはドイツ語原詩の通りです。原詩の第1と第2節を参考のために挙げてみます。
Ich weiss nicht,was soll es bedeuten,
Dass ich so traurig bin;
Ein Marchen aus alten Zeiten,
Das kommt mir nicht aus dem Sinn.
Die Luft ist kuhl und es dunkelt,
Und ruhig fliesst der Rhein;
Der Gipfel des Berges funkelt,
Im Abend sonnen schein.
理路整然と大変に美しい詩型であることが分かります。1行目「,」(コンマ)2行目「;」(セミコロン)3行目 「,」(コンマ)4行目「.」(ピリオド)という規則は6節まで完全に守られています。そして各節、1行目と3行目、2行目と4行目できれいに脚韻をふんでいます。この押韻は日本の唱歌からも片山訳を読んでも味わえないハイネの調律です。
唱歌の方は3番までしかありませんので、原詩6節を2節づつ束にしたこともわかります。冒頭に挙げた片山訳の内容(8行分)を4行の中に押し込めて創作したことになります。しかし格調の高さ・・・ゲーテの「トゥーレの王」にあるような・・・は、文語表現であるからでなく’語り口’によって保存されているようにも思います。6節を三番までに短縮する作業は、それで何かを犠牲にしたものがあったとしても、なお骨の折れるものであったことが伝わってきます。
平野達也:編曲「ローレライ」(オーケストラ版)https://www.youtube.com/watch?v=zDPDoqQepcU
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