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2015-07-25ドイツ民謡4-歴史概観1 [音楽]




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 ドイツの歌を最も遡れば、8世紀にまで遡ることができるといいます。カール大帝が6世紀頃の英雄歌謡を収録させたものの断片69行(「ヒルデブラントの歌」)が伝わりますが、もちろん楽譜は記されません。(ネウマ譜が10世紀頃、定量記譜が13世紀頃から使用されましたが、だからといって13世紀の民謡が定量記譜によって書かれた訳ではありません。)
 民謡の記録は15世紀に始まり、15世紀の後半には手書きの歌謡集、そして16世紀には印刷された民謡集が刊行されたといいます。(「ゲーテの詩とドイツ民謡」赤井慧爾、東洋出版1994

以下ドイツ民謡の歴史の大まかな流れをみていきます。(巻末の参考文献により筆者再構成) 

12世紀
ミンネゼンガーが生まれる (15世紀まで続く)
「ミンネゼンガーの抒情音楽は、言葉と音楽の一体化を目ざすそのやり方で、すでに歌曲(リート)を予告する典型的にドイツ的な音楽である。」(クロード・ロスタン「ドイツ音楽」) 少し言い過ぎかとも思いますが、ドイツ民謡(更に広くドイツの歌)の歴史を遡るという主題においてはその「萌芽」を捉えるという意味はあると思います。

13世紀
「カルミナブラーナ」成立 (数曲のネウマ譜が残るが他は歌詞のみ)

14世紀
ミンネゼンガーの芸術が転回点をを迎え、より市民階層的な内容を有するようになり、また一部は後のマイスタージンガーと共通する性格も持ち始める。

15世紀
マイスタージンガーの文学・音楽の興隆(〜17世紀)。後のヴァーグナー「ニュルンベルグのマイスタージンガー」。手書きの歌謡集が出る。「ヘッツラリン歌謡集」「ロッハム」「ヴァインハウス」「グローガウ」「ローシュトック」「ケーニヒシュタイン」など。

16世紀
シェッファー「歌謡集」(Liederbuch,Mainz,1513) 等が出版される。
作曲家は口頭で広がる歌を細工して、多声の楽曲にしたりまた混成曲(Quodlibet)*にしている。
*バッハの「ゴールドベルグ変奏曲」のものは有名

17世紀
17・18世紀は記録文書が減るという(「ゲーテの詩とドイツ民謡」p.210)。<脚注> 
1679年ペストの大流行「うるわしのアウグスティン」(オーストリア民謡) 

18世紀〜19世紀
ヘルダー(1744-1803)の影響により、直接に民衆の伝承から汲み取る歌謡集が出るようになる。
「子供の不思議な角笛」(Des Knabed Wunderhorn)(1806〜1808)(L.アルニム、C.ブレンターノ) 
地方的な歌謡集、エルク、ホフマン・フォン・ファラスレーベン、ウーラント、ら。 

20世紀
ジョーン・マイアーの主唱で民謡の体系的な収集が始まる。「ドイツ民謡文庫」は約32万曲の民謡記録を持ち、全てに注釈を付けて出版することを課題としている(1914年創立)。 

まとめ
 いわゆる音楽史とは違って民謡の歴史はややぼやけた感があります。(芸術)音楽史も古いものは当然資料が少なく12世紀頃のミンネゼンガー等は音楽史にも民謡史にも重複し、文学史まで重複してしまいます。
 また、印刷による伝播は口承のそれに加えて早く確実なことも確かで、それが16世紀の項に記したことです(活版印刷発明は1439年とされる)。
 そして最も重要な時期とは、ドイツ民謡がドイツ本来の姿であると自覚した時、すなわち18〜19世紀、ヘルダー以降と考えます。今はこのヘルダーなる人物、意識的に触れずにいます。また改めて触れたいと思います。

 次回は民謡史だけでなくもう一段階大きいドイツ音楽について、歴史上の画期について補足的に触れておこうと思います。 

<脚注>
「17世紀と18世紀には、記録文書はまた減るが」(「ゲーテの詩とドイツ民謡」の一文についてどうしても有効な理由を見出せずにいます。
17世紀はバロック時代、シュッツやブクステフーデの時代、18世紀はJ.S.バッハ、ヘンデルの後期バロックから前古典派の時代、芸術音楽としてのドイツ音楽が勃興する時期にあって、どうして世俗音楽、民衆の音楽的営みとしての民謡の記録が減ってしまうのか、私には今のところ明確な理由が見出せておりません。
 17世紀についてはルター派の音楽教育の継続(教会音楽として記述されたということ)、または三十年戦争(1618-1648)による疲弊、
 18世紀についてはハンブルグに代表されるフランスやイギリスからの輸入オペラという新娯楽(新興味)、これくらいの理由しか今のところ見出せておりません。記録が減るという現象だけでしたら戦争のような気がしますが、それでも記録は残るはずと考えています。 

参考文献
「ゲーテの詩とドイツ民謡」 赤井慧爾、東洋出版1994
「ドイツ音楽」クロード・ロスタン 吉田秀和訳、白水社1980
「音楽史の名曲」美山良夫、茂木博、春秋社1997 
新訂標準音楽辞典、音楽之友社2008「ドイツ」の項目

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平野達也作品の試聴はこちら↓

平野達也:作曲 III.「フィナーレ・クビカ」 〜 『シンフォニエッタ・クビカ』吹奏楽のための三章より https://www.youtube.com/watch?v=VqbgTeCc15Q  

平野達也:作曲 II.「ロマンツァ・メリカ」 〜『シンフォニエッタ・クビカ』吹奏楽のための三章よりhttps://www.youtube.com/watch?v=DohLVx7LBq4

平野達也:作曲I.「シンフォニア・クビカ」 〜 『シンフォニエッタ・クビカ』吹奏楽のための三章より https://www.youtube.com/watch?v=deEr78JVUDw        

 


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