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2015-03-01ビーダーマイヤー2 [音楽]




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1814年から1848年(3月)革命までのウィーンの芸術思潮、ビーダーマイアー。(当ブログ関連記事2015-01-20)ウィーンの地理的な位置が独特の文化を醸造しました。三十年戦争、対ナポレオン戦争においても帝都が戦場になることはなかったというヨーロッパの東端に位置、地理的条件です。
「外から流れが入らぬ淀みの中で、ウィーンのビーダーマイアーはその特色をいっそう濃くしていったのである。」 (渡辺護「ウィーン音楽文化史(上)」音楽之友社1989p.245)
事実上メッテルニヒ執政下がビーダーマイアーその時期ですが、束の間の平和と反動体制、芸術においては特に検閲の厳しかった時期でもあります(シューベルトのオペラでさえ検閲による非上演であった)。

「物質的にはある程度充足された生活があり、他方精神的には思想の不自由に堪えねばならないという状況、そこから生まれてくるものは「締念」である。(略)英雄的行為から遠ざかり、支配者の圧政に抗わず、運命に忍従する。このいわゆる「内面への亡命」によって人々は心の平和を保ったのである。」前掲書の記述は市民感情の機微を伝えてくれます。

またビーダーマイアー前期にウィーンで活躍したベートーヴェンとシューベルトの内、シューベルティアーデはビーダーマイアーの典型であるとの指摘(p.251)は、私の中にないビーダーマイアーに対する感覚でした。(シューベルトはロマン派の巨匠、すなわちベートーヴェンと同じグループで括っていました)また氏はビーダーマイアーとロマン主義の関係を次のように記述しておられます。
「ビーダーマイアーにはロマン主義と共通する点も見られるが、ロマン主義が非現実的なもの、幻想的なものへの強い憧憬をもっているのに反し、ビーダーマイアーのそうした憧憬は一種の弱さをもち、背景に押しやられた形で存在する。また現実的である点はまさにロマン主義のアンチテーゼでもあろう。」 (p.249)
そしてビーダーマイアーの機微に触れる文章「平和や秩序はあきらめによって成立したものであるから、つねに弱さを性格とすることは否定できない。表面的なおだやかなものにとどまり、現実を鋭く、また徹底的に凝視することをしない。しかしおだやかさのかげに哀愁やときに痛烈な悲しみや苦痛がひそむことは避けられない。これもまたビーダーマイアーの性格であろう。」 
続けて通史上にビーダーマイアーを捉えた記述。「生活の背後にひそむ不安や苦悩から逃れる最良の手段はこの苦しみを忘れることである。それは生の快楽にふけることと自然に慰安を見出すことであった。これは今はじまったことではなく、古くからウィーン市民の特徴的な生活の仕方であったが、ビーダーマイアー時代は特に発展した。生の快楽の表面的なあらわれは、市民の舞踏熱である。そしてまたライムントやネストロイの喜劇に対する高い人気であった。」 (p.244)

ビーダーマイアーの気分はウィーン独特のもので、3月革命以前の限られた時期だけの特徴ではないこと、継続して気質として伝統的に持ち続けてきたものが、この時期に色濃く吹き出したという指摘は、参考になる記述です。
この時期に色濃く吹き出した思潮は、音楽ではウィーンナワルツ、ウィーンナオペレッタ(「こうもり」など)として世に現れてくるわけです。

 余談かもしれませんが、同書に世界史で市民音楽の流行化現象が三回あったという記述(出典、実数不明)があります。第一回は十九世紀初頭の中部ヨーロッパ、第二回は十九世紀後半のアメリカのゴールドラッシュ時代、そして第三回は第二次大戦後から現代に至る日本、というものです。
この時期のウィーンのビーダーマイアーと戦後日本の芸術や芸術音楽に関する感情は比較していけば類似点が見出せるのかもしれません。
百科事典と家庭用ピアノが各家庭に急速に広まっていく社会現象です。 

中流意識、諦念、快楽的音楽(ウィンナワルツなど)の関連、そしてその影に悲哀のエッセンス・・・。ビーダーマイアーについて一歩知識を進めてくれる興味深い書物でした。 

 

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平野達也jazzpiano3ライブ予定
◇ザットフォー(近鉄今里すぐ)http://zattofour.com/
☆2015年3月21日(土祝)チャージ¥2.000-
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ピアノ:平野達也、ベース:岸政彦、ドラム:鶴牧潔  

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平野達也作品の試聴はこちら↓ 

平野達也作曲:吹奏楽のための「青と赤銅色のオーバード」(ティーダ出版)  

 

 


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