2015-02-27「天国と地獄」オッフェンバック2 [音楽]
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オッフェンバック「天国と地獄」(1858) 2幕から目を引いた箇所を抜出してみます。
ダイアナ(ソプラノ)が歌う部分、譜例3小節目e-mollの5度の第一転回形からG-durの5度基本形へのバスの半音下降。滑らかな進行です。
同じく2幕、オリンポスの神々が大挙して歌う場面、半音階がD-durの5度の和音の上を大人数の合唱で堂々と渡り歩いていきます。非常に不協和で迫力があります。大胆な書法です。
商業的大衆音楽を書いたオッフェンバック。上記のような繊細な部分、またきっぱり割り切った部分、双方の書法が混在、目を引きます。キャッチーな旋律は堅実な技術、ロマン派語法(3度転調など)に支えられていることも楽譜の随所から読み取れます。
オッフェンバック(1819-1880)の同時代人、R.ヴァーグナー(1813-1883)、J.ブラームス(1833-1897)が芸術家として目される中、他方別所で音楽活動を行ったオッフェンバック。彼の書法は数点挙げた譜例からも決して低級にのみ失するものではありません。簡潔且つストレート、無駄なくエッセンスを保った音楽。彼の作品はヴァーグナーのように幾晩もの演奏時間は擁しませんが、劇音楽として確実な技術を感じさせるものです。
オッフェンバックの音楽には鋭い風刺が込められているといいます。風刺は自分より大きなものにするのであって弱者にはしないものです。また風刺は的確でないとただ単なる冷やかしや揶揄になってしまいます。風刺を成立させるには技術が必要であるということです。
オッフェンバックの業績とは「芸術」という誰もが分かっているようで誰も分かっていないものへの的確で痛烈な風刺であったのかもしれません。こういう刃(やいば)は誰しもが持てるものでもありません。
ヴァーグナーが政治的オペラ作家であったのなら、オッフェンバックは鋭い風刺家であったのではないでしょうか。
ヴァーグナーと離れたニーチェ(アフォリズム)がふと頭をよぎりました。
書籍
「天国と地獄 ジャック・オッフェンバックと同時代のパリ」S.クラカウアー ちくま学芸文庫1995
「オッフェンバックと大衆芸術 パリジャンが愛した夢幻オペレッタ」 森佳子 早稲田大学学術叢書2014
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平野達也jazzpiano3ライブ予定
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ピアノ:平野達也、ベース:岸政彦、ドラム:鶴牧潔
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