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2015-10-12マンハイムのソナタ形式、J.シュターミッツの場合3/3 [音楽]




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J.シュターミッツ(1717-1757)がマンハイムの宮廷に仕えたのは1741年(24歳)からで(中辞典、音楽之友社)C.P.E.バッハ(1714-88)がベルリンのフリードリヒ2世に仕えた(1740年)のとほぼ同時代です。

前回にみた完全にソナタ・アレグロフォームをもつシンフォニー(「6つのオーケストラのためのトリオ」Op.1、第2番A-dur,第1楽章、1750年頃の作品)より以前に、もう既にソナタ・アレグロフォームをもつ楽曲があるのではないかと期待し探索を続けましたが、どれも年代が特定できないものばかりでした。従ってここに例示することに躊躇せざるを得ません。前回みた「6つのオーケストラのためのトリオ」は、なるほど作品番号1をもっています。しかしながら作品番号は必ずしも作曲順を表すものとも限らず(モーツァルトの場合もパリで出版したものを作品1と呼んだ例がある)、出版による作品番号の可能性もあるので、作品番号の付いていないものにも期待をして探索をしましたがどれも年代が、つまり1750年以前とは特定できないものばかりでした。
 しかしそれら検分したシンフォニア群はソナタ・アレグロフォームになりきっていないとはいえ、前段階(属調への移行、新旋律の提出等)を示しており1750年以前の作品ではないかとの推測は成り立ちます。1750年以前であるその他理由としては、簡潔性の欠如、バスの単調さ、主題の独立性の低さなどを挙げたいと思いますが、それにしても1741年に出仕して後、9年間に書かれたシンフォニーはきっとたくさんあるはずなのでしょうが〜ソナタ・アレグロフォームがより新しい目印だということも言い切れるわけでもないのだが〜年代の特定に関しては更に多くの資料が必要になると思われます(この点は音楽史の盲点かもしれません)。

そのように年代が特定できないことをお断りしたうえで、ソナタ・アレグロフォームの前段階的楽曲だと考える一例を引いきたいと思います。

そのシンフォニアは以下のように始まり 

J.Stamiz Sinfonia F-dur年代不明1.jpg 譜例1

経過部、新たな旋律を迎えます(3連音符)。

J.Stamiz Sinfonia F-dur年代不明2.jpg譜例2

そして属調で第2主題を提示します。

J.Stamiz Sinfonia F-dur年代不明3.jpg 譜例3

第1主題は個性的ではあるもののその形象は古典派的主題概念からいくと「ぼんやり」したもののように思えます(譜例1)。そして分散和音だけで書かれている、つまり和声平面の確立が前提であるその書法はヴィヴァルディ的で、そこまでアルペジオを徹底しているわけではないので、ヴィヴァルディからソナタ・アレグロフォームの過渡的様相と考える音楽現象です。

そして私が最も注目するのはバスです。上に示したどの譜例のバスも単調なものに見えます。この楽曲の場合、ポリフォニーの旋律対旋律の横の関係を解消した垂直的音楽志向、そのホモフォニー的志向の最初的な書法にみえます。それは前回示した「6つのオーケストラのためのトリオ」Op.1 と比較していただければより明確ですが、この楽曲にみられる書法は完全に上声にある単旋律を際立たせる、その目的のみに奉仕したものだと思います。まさにその点ににこの曲を例示した意味もあるのですが、この楽曲は新たな旋律の提示、連続するメロディーにその興味が向けられていると考えます。このことはいうなればイタリア・オペラの序曲的傾向であり、マンハイムの参照先がイタリアにあったことを強く思わせるものです。

ソナタ・アレグロフォームの前段階としてはこのようなことから2点指摘できるように思います。1つはソナタの主題はイタリア・オペラの「歌謡性」にまずその起源を求めることができるのではないか、ということ。2つ目はポリフォニーを解消したホモフォニーにおいて旋律に興味がおかれ、その旋律は興味の持続のために新しく登場し続けるという要求〜対比の問題としてリトルネロの交代の対比にかわる新対比〜があったのではないかということ(複主題制)。

このようなことから、この楽曲が1750年以前のものでるとし、さらにその内容についてソナタ・アレグロフォーム完成への前段階的要素と考えられる、つまりソナタ形式として確立されることについて「歌謡性」というものと、対比性というものついて指摘することができる、このようなことを考えてみました。

その他、参考音源 J.シュターミッツ シンフォニア A-dur ''Fruhling"
愛すべき音楽。第3楽章にメヌエットをもつ実例として。 
https://www.youtube.com/watch?v=__HFUpc6tRs

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平野達也トリオ予定
△十三トミーズ (月間レギュラー出演)
2015年11月3日(祝)19:30〜  P.平野達也、B.岸政彦、D.弦牧潔   
http://tommys13.web.fc2.com/Top/Tommys.html 
◯ザットフォー(月間レギュラー出演)
2015年11月13日(金) 19:30〜 レギュラー出演
P.平野達也、B.岸政彦、D.弦牧潔 
http://zattofour.com/ 

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平野達也作品の試聴はこちら↓
平野達也作曲:吹奏楽のための「2つの対の踊り」(未出版) 


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